石川県かほく市と聞いて、地図のどこにあるか指せるでしょうか?
正直に言えば、私もこのチームの関係者にある場所でお会いするまで、かほく市の存在を知りませんでした。
海と田園がゆるやかに広がる、静かで心地よいこの街。

そんな街に、2024年4月、とり野菜みそ BLUECATS ARENA(かほく市総合体育館)が誕生しました。「とり野菜みそ」は石川県では誰もが知る家庭の味。そんなネーミングを冠したアリーナとそこにあるチームには、是非見たくなる魅力がありそうです。

ここを本拠地とするのが、PFUブルーキャッツ石川かほく。 この町に本社を置く情報機器メーカー・システムインテグレーター企業の実業団が母体となった女子バレーボールチームで、SVリーグに参戦しています。
人口約3万5000人の小さな街に、人が訪れる理由をつくりつつあります。
とり野菜みそ BLUECATS ARENAへのアクセス
北陸屈指の観光都市である金沢から、普通列車で約25分。七尾方面へ北上すると、宇野気駅に着きます。 列車は1時間に1本しかないので、そこには注意してください。
駅からアリーナまでは徒歩20分ほどですが、列車の到着、出発時刻に合わせて無料シャトルバスも運行されています。 ありがたい配慮です。

毎回違うテーマ 企画の根っこにあるものは

私が訪れた日のテーマは昭和レトロ。
昭和生まれ無料招待という太っ腹な企画のせいか、会場はやわらかい空気に包まれていました。 工藤静香、吉川晃司、安全地帯など、懐かしい曲が体育館の壁に反響すると、あの頃の情景がふとよみがえります。
そして壁に掲示されていたのは、AIで生成した聖子ちゃんカットの選手ビジュアル。 面白がって写真を撮る来場者の姿が。スポーツ現場でAIをここまで正面から使った企画は、私も初めて見ました。

チームのホームページを見ると、節ごとに企画がまったく違っているのに気づきます。 まだ、どれが一番、地元の人たちに刺さるかを探している途中なのかもしれません。
そして、どの企画にも「かほくの人たちをどう喜ばせるか」「どう元気にできるか」という、まっすぐな思いが根っこにあると感じました。
柔道場がキッズスペースに 冬の北陸に寄り添う
アリーナ内には、柔道場を利用したキッズスペースがありました。
SVリーグのシーズンは、冬をまたぎます。畳の上で子どもが安心して遊べる広い屋内スペースは、家族連れには本当にありがたいはず。地域の暮らしを理解しているからこそ浮かぶ発想、と感じました。

選手のぼりにも地元愛
コンコースに並ぶ選手のぼりには、「かほく市のおすすめスポットは?」という質問が添えられており、選手それぞれの回答に個性が見えました。

選手がこの街をどう見ているのか。その一端が垣間見えるだけで、応援する側の気持ちも自然と近づく。
小さなことですが、こういう言葉が積み重なるほど、地域密着は本物になっていくのだと思います。
ワインでかほくを伝える 地域発信の新しい形
地元産のぶどうを使ったオリジナルスパークリングワインも印象に残りました。

後から調べてみると、ただラベルにチームロゴをプリントしただけのものとは、根本的に違っていました。
- かほく市特産の「高松ぶどう」を使用
- 地元農家や醸造所と共同で製造
- デザイナーが、かほくらしさを込めたパッケージ
- 収益の一部を能登半島地震の復興支援に寄付
これは、スポーツチームが地域の物語を一本のワインに凝縮した取り組みなのです。
観戦に来た人がワインから街を知る。ワインが広まることで、かほく市の名前が届く。
スポーツを使ったこんな地域発信の方法があるのかと、ハッとさせられました。
物理的にも、心理的にも距離が近い
1871人収容の小さなアリーナには、もうひとつの魅力があります。

それは、物理的にも心理的にも選手との距離が近いことです。
スパイクが決まった瞬間の迫力やスピードが感じられる。中継映像や大型アリーナでは味わえない迫力です。
そして、選手たちの親しみやすさ。試合後には写真撮影に応じてくれる選手が多く、勝負の緊張が解けた表情が柔らかい。

声援の迫力や音楽の盛り上げ方は、まだ発展途上に見えました。演出のリズムと会場の熱が噛み合わない瞬間もありました。
でもそれは、「どうしたら、この街の人がもっと楽しめるか」「どうしたら、また来たくなるか」を考え続けているからこその試行錯誤でもあります。
昭和レトロも、キッズスペースも、ワインも、根っこには同じ気持ちがある。
かほくを喜ばせたい。
そのまっすぐな思いが、この日のアリーナの随所に確かに流れていました。
小さな街の小さなアリーナで感じたスポーツチームの気持ち
SVリーグになって2シーズン目。 とり野菜みそアリーナでの試合も2シーズン目。
まだまだ伸びしろはあります。 でも、久しぶりに、「街を思うスポーツチームの気持ち」に触れた気がしました。
こういう風景に出会えること。 心が動く瞬間があること。
スポーツの魅力を見つける旅は続きます。