バスケットボール 試合

なぜ熊本ヴォルターズの会場はこんなに熱いのか

Bリーグの熊本ヴォルターズは、いわゆる強豪チームではありません。
しかし、その会場の熱狂的な応援の評判は、Bリーグファンの間で広く知られています。

ネットで映像を見ているだけでは分からない。
この熱は、実際に感じるしかありません。

熱狂の源を探るため、2025年12月のある日、熊本を訪れました。

熊本県立総合体育館へのアクセス

熊本県立総合体育館は、街のど真ん中にあるわけではありません。
それでも、「行きにくい」と感じることはありませんでした。

JRの場合、新幹線が停車する「熊本駅」からひと駅、約3分の「上熊本駅」から徒歩5分。
街の中心地「通町」からは、路面電車でも路線バスでも20分ほどで、体育館近くに停留所があります。

初めて訪れてもアクセスで迷いにくく、「今日は少し早めに行ってみよう」と思える距離感です。
そして実際に感じたのは、この会場は早めに来てこそ楽しめるということでした。

早く着いて正解、と思える会場づくり

敷地内に入った瞬間、楽しい空間が広がっていました。

キッチンカーがずらりと並び、わらび餅のスイーツ店、地元の果物を使ったお店、カレー、唐揚げ、焼きそばなど、どれも一工夫あるメニューがそろっています。支払いはキャッシュレス対応で、ストレスもありません。

テーブルや椅子、ドラム缶を使った立ち飲みスペースも設けられており、少し寒くても、外で食べたり、飲んだり、話したりしていると、
観戦前からもう一つの楽しみが始まっている感覚になります。

体育館のロビーもにぎやかです。
グッズ売り場があり、赤い羽根共同募金のブースも展開。
ファンクラブ抽選会には長い行列ができていました。

グッズは選手のものだけでなく、マスコットのものも充実しています。
クマのキャラクターで、初めて来た人や子どもにも親しみやすい印象です。

「試合開始ギリギリに行けばいい」ではなく、「少し早く行きたい」と思わせてくれる空間。
試合前の時間に「食べる」「買う」「参加する」ことが自然にできるのは、この会場の大きな魅力です。

古さを感じさせない設備

建物自体は1982年竣工で、新しい施設ではありません。
それでも、随所に工夫が見られます。

電光掲示板は2面あり、リボンビジョンも設置。
白い壁にはプロジェクター投影を活用し、スクリーンが見えにくい席をカバーしています。

チームカラーである赤を使ったパネルや幕で雰囲気をつくり、「古い体育館」という印象をうまく和らげています。
天井にはスピーカーを追加し、音響も改善されています。

この後の演出を支える、大切な準備が丁寧に積み重ねられていると感じました。

会場を支えるアリーナDJ

この体育館で特に印象に残ったのが、アリーナDJの存在感です。

試合前のオープニングは約20分。
最初は暗く、静かに始まります。
最初からテンポを上げることはありません。
少しずつ、確実に、会場の熱を高めていきます。

ペンライトは自動で色が変わり、音楽に合わせて振っているだけで一体感が生まれます。
難しいことは何もありません。

チアは派手に前へ出るというより、会場全体の空気を支える役割に徹しています。
主役は、あくまで観客です。

相手チームの入場時には、場内の色もペンライトも相手チームカラーに。
「ようこそ」というメッセージが伝わってくるような演出です。

ホームチーム入場前には、スクリーンに「熊本に走る熱源であれ!」というクラブの想いが映し出されます。
会場全体が、その言葉の意味を受け止める時間。
入場演出だけで10分ほどを使い、しっかりと気持ちをつくってくれます。

応援は、誰でも参加できる

応援はとてもシンプルです。
オフェンス2種類、ディフェンス2種類。
タオルを振って「わっしょい」。それだけで参加できます。

応援練習が終わると、間髪入れずに応援ソング、掛け声、手拍子が続きます。
試合開始の瞬間まで、DJが「間」をつくらず、流れを止めません。

この細かな積み重ねが、応援参加率の高さにつながっているのだと感じました。

試合中も、音で空気を支える

試合中、DJは前に出すぎません。
盛り上がっているときは、あえて音を入れず、観客の声を生かします。

必要な場面だけ、低い音で背中を押す。
音量は控えめで、スタンドの声や手拍子が前に出るように調整されています。

この日は接戦でした。
試合終盤に向かって、観客の声はどんどん大きくなります。
相手のフリースロー時のざわめき、外れた瞬間の声。

「声も戦力なんだ」
そう実感させられる場面でした。

後半のオフィシャルタイムアウトでは、タオルを回し、振り、最後は「HEY」。
シンプルですが、確かなエネルギーが生まれます。

会場は、確かに一つになっていました。

DJの仕事は「グルーブをつくること」。
その役割を、これ以上ない形で体現していると感じました。

早く来て、最後まで楽しめる会場

この日の観客数は3,517人。
満員には届いていません。

それでも、
・早めに来ても楽しい
・初めてでも自然に応援に参加できる
・音と空気で気持ちをつくってくれる

こうした要素が、確かにそろっています。

試合の最後まで、気持ちを途切れさせないこと。
その中心にいるのが、アリーナDJでした。

この日、特別だったのは演出でも、設備でもありません。

声を出し、間をつくり、誰かの背中をそっと押し続けていた人たちがいたこと。
その積み重ねが、確かな熱狂を生んでいました。

スポーツは、強さだけで人を動かすものではありません。
この会場で、それを改めて教えられた気がします。

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