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映画「KANO」の舞台へ 台湾・嘉義で野球ファン感動の聖地巡礼

このブログで初めて、スポーツ映画の聖地巡礼をしてきました。
台湾南部の都市、嘉義市は2015年に日本で公開された映画「KANO 1931海の向こうの甲子園」で、野球ファンにすっかり有名になりました。

戦前の日本統治下において春夏計5度甲子園に出場した嘉義農林は、略して「かのう(KANO)」と呼ばれていました。1931年に甲子園に初出場して準優勝した実話を元につくられた映画が「KANO」です。台湾での制作ですが、内容的にセリフの多くは日本語で、永瀬正敏さん、大沢たかおさん、坂井真紀さんなど、有名な俳優が主要な役どころを務めています。

永瀬正敏さんは、愛媛・松山商業で甲子園出場の実績を残した後、嘉義にやってきて野球部監督を務めた近藤兵太郎を演じています。映画の主人公です。近藤は、全然勝てなかった弱小チームをスパルタで鍛え上げました。守備に長けた日本人、打撃に優れた漢人、足の速い蕃人(先住民の通称高砂族)という、それぞれの特徴を生かして、バランスの良いチームをつくっていました。90年以上前のことですが、今日見ると、「ダイバーシティ」という言葉が頭に浮かびます。

嘉義市は、この映画をきっかけに、野球の街として積極的に国内外にアピールしています。映画の公開からはずいぶん年月が経ちましたが、現地を訪れると、観光マップにも記載されていました。現地を訪れ、嘉義農林が甲子園に残した足跡に思いをはせることは、野球ファンならでは楽しみではないでしょうか。

嘉義市内のアクセス

嘉義は台湾では、ジャーイと発音します
台北からは、高鐵(高速鉄道)で約1時間半で着きます。高鐵の駅は、街の外れにあります。バス(BRT)かタクシーで20分ほど移動し、台鐵(一般の鉄道)の嘉義駅に行くと、そのあたりが市街地です。台鐵の嘉義駅は映画「KANO」の最初の方で出てきます。

嘉義駅の構内にもこんなものが

嘉義市内で「KANO」の聖地巡礼を行う時には、バスの中山幹線が、頼りになります。他のバスとは見た目もちょっと違うのでわかりやすい。どこまで行っても12台湾ドルの均一料金です。
ちなみに、台湾で地下鉄やバスに乗る場合は、必ずICカードを事前に買っておきましょう。「悠遊カード(ヨウヨウカー)」と言います。現金で払っている人を全く見かけませんでした。台北の地下鉄の駅のカウンターや自販機で買うのが便利でしょう。このICカードは、台北や高雄の地下鉄でも使えます。全国的に使える交通系ICカードとお考えください。
また、台湾のバスは、前扉、中扉どちらからでも乗り降りできますが、乗った時と降りる直前にICカードをピッとするのが統一のルールになっています。

中央噴水池

駅から中山路という広い通りをまっすぐ歩いていくと、10分ほどで投手の銅像がある大きなロータリーにぶつかります。
その真ん中にあるのが、嘉儀農林で活躍した呉明捷投手の銅像です。

そして、この噴水がある場所は、映画の中でも、たびたび出てきました。選手たちが「甲子園!」と叫びながら、ランニングしていたシーンもありました。今も昔も変わらない街のシンボルですね。1931年に甲子園で準優勝した時には、パレードも行われたそうです。

国立嘉義高級商業職業学校

この中山路を、中山幹線バスでさらにまっすぐ進むと正面に小高いところが見えてきます。これが嘉義公園です。

「嘉義公園」というバス停で降りた所の目の前にある建物が、国立嘉義高級商業職業学校。昔はこの場所に嘉義農林がありました。看板や石碑で示されています。

嘉義公園

嘉義公園は、かつて嘉儀農林の野球練習場があったところです。中山路に面した入口付近には嘉義農林や野球部の歴史を語るプレートが並んでいたり、モニュメントもあります。その近くには、観光案内所とお土産を売っている建物もあります。中では「KANO」グッズも買うことができます。

1931年当時の打順が書かれていて、よく見ると、強打の漢人が中軸を務め、日本人が下位に並んでいます。

嘉義市立野球場

公園内をさらに奥へ進むと、野球場が見えてきます。嘉義市立野球場です。「嘉義市KANO棒球場」と表示されています。
かつて嘉儀農林のメンバーが猛練習をしていたグラウンドが、立派な球場になって、今も使われています。

プロ野球の本拠地にはなっていませんが、私が現地を訪れた2024年にはプロの台鋼ホークスなどが数試合で使っていました。そこでの公式戦も見ることができました。

天然芝で、外野の向こうに大きなビルが二つ見えます。約1万人収容とスタンドが小さいことから、チアリーダーによる応援では特に一体感が感じられました。選手たちを間近に見られる楽しみもありました。

嘉義神社の跡地

嘉義公園内には、野球場よりも、さらに高いところ嘉義神社の跡地があります。映画の最初の方で、選手たちが近藤監督に呼び出された場所です。

当時の様子の写真などが見られる嘉義市史跡資料館と、球場や市街地を一望できる射日塔という観光スポットもあります。

国立嘉義大学

中山幹線バスの終点に当たる嘉義大学にも「KANO」に関連するスポットがあります。

終点のバス停のすぐ近くに大学の購買部の建物(国立嘉義大学員生消費合作社)が建っています。その二階部分が「KANO棒球特展」という展示スペースになっています。

ユニホームやボールなどの記念の品々や、当時の新聞などが並んでいます。入場無料で、こんなにたくさんのものが見られます。中には日本語のものも。

また、この建物から道路を挟んで向かい側の芝生のスペースにもモニュメントがあります。

貴重な野球遺産を目撃

もちろん、同じ街でも今は建物も変わってしまっているのですが、駅と噴水、学校とグラウンドの距離を感じることができました。特に、「KANO」は実話に基づいた映画ですので、アニメなどとは違う感じの聖地巡礼になります。

そして、現地を訪れたからこそ、当時の貴重な品々を実際に見ることができました。甲子園に出場した後も、日本の大学やプロ野球で活躍した選手や台湾の野球の発展に貢献した人もいたと知ることができました。

今日でも、台湾プロ野球で指導やプレーをする日本人もいますし、逆に日本のプロ野球やアマチュア野球で、活躍する台湾の人たちもいます。1931年の嘉義農林の躍進から、今日まで日本と台湾の野球の歴史は繋がっている。そんな歴史の重みを感じられました。

こういう場面に立ち会えること、心が動かされること。
スポーツの魅力を見つける旅は続きます。

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