2024年も終わりが近づく中、今年は日本で最も歴史あるスタジアム、甲子園球場が設立100周年を迎える記念すべき年でした。阪神タイガースや高校野球で知られるこの場所は、長年スポーツファンに愛され続けています。12月の冷たい風を感じながら、ギリギリセーフのような感じで甲子園歴史館を訪れることができました。
甲子園歴史館へのアクセス
甲子園歴史館は、球場のバックスクリーン近くに位置します。最寄り駅である阪神電鉄の甲子園駅からは徒歩すぐ。大阪梅田駅から特急で約12分、神戸三宮駅から約18分という好アクセスです。
駅から最も近い球場の部分はバックネットあたりになるので、歴史館までは球場の外をぐるりと半周しなければなりません。駅を背にして右側、一塁側から回っていくことをオススメします。いくつかの記念碑があったり、タイガースの室内練習場が見えたり、甲子園素盞嗚神社も見られるからです。
2010年オープン、2022年にスペース拡張
甲子園歴史館は、2010年にオープンした時は、外野スタンドの一部で営業されていましたが、2022年3月からは展示スペースの一部が球場に隣接する複合施設内にも拡張されました。チケットを買って入るところは、そちら側の2階にあります。
入館料は大人900円。セ・パ12球団のファンクラブ会員は、100円の割引があります。
私は、野球がシーズンオフの12月に行ったので、かなり空いていました。阪神タイガースの試合開催日や春夏の高校野球大会が行われる期間も、もちろんオープンしています。ただし、4万7400人を収容する球場ですので、そういう時はかなり混雑するでしょう。
写真撮影はOK。ただし、ネットやSNSへの投稿はNG
入場ゲートを通過した直後に館内撮影ルールが掲示されています。原則、写真撮影は可能。動画撮影は禁止。そして、撮影した写真をSNSに投稿するなど、オンラインに上げることは禁止されています。
個人の思い出として保存するために撮って、使ってくださいという話です。ただし、全体で4か所だけ、オンライン上への投稿がOKとされている場所があります。このルールがあるため、今回の記事はひたすら文章で説明していきます。写真でチラリと覗いてみたいという方は、甲子園歴史館のホームページをご参照ください。
阪神タイガースゾーン:90年の歴史とともに
入場ゲートを入ると、大きなスクリーンに映像が流れています。そして、次に目に入るのが、2度の日本一の記念品です。1985年のもの、そして2023年に加わったばかりのもの。阪神タイガースは日本で2番目に古いプロ野球チームで90年の歴史があります。その中で、日本一は、2度しかありません。
続いて、リーグ優勝した時の巨大なペナントやトロフィー、選手が使用した用具などが展示されています。こちらも1950年に2リーグに分裂して以降は、6回しかありません。このあたりを見ると、阪神タイガースが優勝すると、とんでもない騒ぎになる理由がちょっと分かってきます。
続いては、球団創設からの歴史をいくつかのブロックに分けて振り返るとコーナーに入ります。展示品は少なく、主な出来事が、パネルに書かれています。写真や映像付きの年表という感じです。博物館としては珍しいのですが、実況の音声が、BGM的にずっと流れています。人気チームなので、昔からマスメディアに多く取り上げられ、映像や音声もたくさん残っているからこそ、可能な演出です。
その後には、歴代の名選手の紹介コーナー。永久欠番になっている選手は、3人しかいないんですね。そして、古い順から選手の写真と使用した用具が飾られています。見学者は「ここから後の選手のことは、記憶に残っている」と思いながら、見ているのではないでしょうか。
過去の名シーンなどを映像で楽しめるコーナーがあって、次の体験コーナーで一息つきます。選手が使用した用具に触ることができたり、ベンチの中に入って、写真を撮ったりすることができます。係員がいて、優勝の胴上げシーンなどが迫力ある映像で楽しめるVRコーナーや、入力した名前がドラフト会議で指名された時の画面に現れるドラフト体験コーナーもあります。お子さんも楽しめるところです。
続いて、企画展に入ります。私が訪れた時は、阪神タイガースの「投手王国」という展示をやっていました。展示品が少なく、パネルで説明する感じだったので、やや物足りない印象でした。企画展は、年に4回で行われるそうです。
タイガースゾーンの最後は、壁の右側には背番号を誰が付けていたかの一覧、左側には名言が記されています。
ここまでじっくり見て60分ぐらいでした。名シーンなどの映像をもっとじっくり見れば、もう少し長くなるかもしれません。
デッキを渡って外野スタンド裏の高校野球ゾーンへ
ここからは、高校野球ゾーンに入ります。チケットにはQRコードが付いていて、それをピッと読み込ませるとゲートが開きます。
歴史を感じさせる白黒の写真が並んだ道を通り抜けた後、ポツンと一つのボールが置かれ、スポットライトが当たっています。これが「始まりの一球」です。第一回全国中等学校野球優勝大会の開幕試合で、実際に使用されたボールです。1915年、当時はまだ甲子園球場は建設されていませんでした。
続いて、「ボールウォール4253」というコーナーに入っていきます。こちらは2005年当時の日本高等学校野球連盟加盟校数と同じ数の白球が埋め込まれています。その中の多くの球には、春の選抜大会か夏の選手権大会に、一度でも出場した学校の名前が印字されています。自分の故郷の学校や何度も優勝している有名校、記憶に残る学校などを思わず探してしまいます。北から南の順で並べられており、右端の方を見ると台湾や韓国にある学校も出場していたことが記されています。映画になったKANOもその一つです。
その後は、貴重な展示品が数多く並べられながら、草創期からの歴史を振り返るコーナーです。
展示品の一つ一つには、誰から寄贈されたのかが記載されています。聞いたことのある選手や監督、学校からのものも多く、たくさんの人の協力で歴史館が成り立っていることがわかります。美術館には個人が所蔵するコレクションをずらりと並べたものがよくありますが、甲子園歴史館は、そういうのとは全く違う成り立ちで、多くの人の人生に携わっている高校野球だからこそ、と感じました。
甲子園大会には記憶に残る名勝負や名場面というのがいくつもあります。それを紹介するコーナーに入ると、自分と高校野球の結び付きが自然と感じられます。「この試合の時の自分は…」といろいろ思い出しました。甲子園で観戦した叔父から、試合の話を聞いたこと。自分と同じ高校生がこんなことができるのかと驚いた時のこと。この試合をテレビ観戦した時、自分の仕事がこんな状況だったこと。展示品を見ながら、自分の内面で楽しんでいます。
まんがと甲子園:日本ならではの展示
「まんがと甲子園」というコーナーは、スポーツ博物館としては、とてもユニークです。漫画なくしては、甲子園を語れないという側面があるから。日本ならではの特徴だな、と思いました。
展示は、巨大な白いスクリーンに漫画の名シーンがいくつか描かれていて、あらすじといつ頃、どの媒体に連載されていたのかの説明文があります。「巨人の星」「ドカベン」「タッチ」など何歳頃に、この漫画を読んだと思い出しました。自分が高校野球をより深く理解するようになったのは、漫画のおかげなんじゃないかと思ったりしました。
誕生当初から大人気
アメリカンフットボールの甲子園ボウルのコーナーが小さくあります。そして、甲子園球場の歴史そのものを紹介する年表は、意外と学びが多かったです。1924年に誕生した頃から、この球場は非常に人気が高かったことがわかります。
そもそも、高校野球の人気が高まって、使用している球場が狭くなったことから、甲子園球場の建設が検討され始めました。立ち見席用に空箱を売る商売が成り立っていたなどというエピソードも知りました。観客がたくさん来るので、カレーライスやかち割り氷を売る商売も早くから成り立ったわけです。また、実は甲子園は野球もできる総合運動場として作られたので、昔は様々なスポーツのイベントをやっていました。別のスタジアムが隣接して設けられたり、テニスコートがあった時代もありました。
スコアボード下の展望スペースも
バックスクリーンの裏側にある通路を活用して、昔のスコアボードで使われていた手書きの選手名の板が飾られていたり、野球殿堂入りした人のレプリカレリーフなども展示されています。これらは実は前振りで、ここを通り抜けると、スコアボードの真下から球場内を見る展望スペースに入ることができます。すごい迫力があるので、試合がない時に行って、ここまで味わうことをおすすめします。
映像コーナーをほとんど見ずにここまで見て、約2時間かかりました。お好きな方は、たっぷり時間を取って、予定に組み込むと良いと思います。
甲子園歴史館は、高校野球や阪神タイガースを中心に、日本のスポーツ史を感じられる場所です。一つ一つの展示品には多くの人々の情熱が宿っているかのようで、スポーツの持つ力と人々の絆を改めて実感できました。
100年を超える甲子園の魅力をぜひ体験してみてください。