ワールドカップで日本のバスケットボールが盛り上がった今、どのあたりまで、その盛り上がりは広まっているのか。
日本代表選手がいるとか、対戦相手として有名選手がやってくるとか、新しいアリーナを使っているとかのアドバンテージがないところを、敢えて選んで見ることも大事じゃないかと思いました。
2023-24シーズンは降格したB3で戦う、香川ファイブアローズの試合に足を運びました。
香川県のスポーツといえば、歴史ある野球が断トツの人気で、サッカーではプロのカマタマーレ讃岐があります。バスケットボールは後発のポジションです。NBAで活躍する渡辺雄太選手が、香川県出身であることは意外と知られていません。
高松市総合体育館への行き方、アクセス
街の中心部にある瓦町駅から、「ことでん志度線」という電車で三つ目の「奥松島駅」で降ります。所要時間は10分足らず。ただし本数が少なく、20分に1本、夜になると30分1本なので注意が必要です。
プラットフォームが一つしかなく、両方向に行く電車が停まります。ことでんは無人駅でも、交通系ICカードすべてが使えるので、旅行者には有難いです。道路に出ると、左手に大きな建物が見えるので、迷うことはないでしょう。
香川ファイブアローズ グッズ売り場や飲食ブースはすべて屋内に
屋外にはのぼりが立っていてますが、ブースはすべて屋内にあります。寒い日も安心です。
高松市総合体育館 スタンドの写真
昭和61年にできたというこの体育館は、コンパクトで二階席からでも選手の顔がわかるくらいです。ただし二階席は全て自由席なので、見たい位置に確実に座るには早めに来る必要があります。
このブログでも取り上げてきた沖縄アリーナやオープンハウスアリーナなど新設も増えてきたBリーグ。ここ香川のメインアリーナは建物そのものだけでは、Bリーグの理念であるエンターテインメントから少し離れている感じがします。例えば、大型スクリーンがないこと。照明もLEDではないので、暗転してから明るくなるまでに時間がかかります。選手名を表示させる場所がないなど、ハード面の課題でできないことがあります。
しかし、そうした制限もある中で、ソフト面では思い切って的を絞り、楽しんでもらおうとしていました。子供たちを喜ばせよう、若者に参加してもらおうという次世代を育てる意識が全体を貫いていました。
香川ファイブアローズは、子どもたちが主役
まず、キッズゾーンがフロアの入り口すぐのところに設けられていて、かなり広いです。一階席の人だけではなく、二階席の人でも入ることができます。
そして、入口から遠い方のゴール近くには、特別席が設けられていました。今季から加入した松井啓十郎選手がスポンサーと共に実施している「KJつながるシート」です。申し込んだ中学生以下の子供たち(保護者1名は同伴)から抽選で招待。「生のプレーを少しでもコートや選手の近くで観戦したい」という松井選手の子供時代の思いが、その発想につながったそうです。
首から札を下げている子供たちの姿も、目に入りました。二階席に中学生以下を無料で招待する「こども未来パス」です。シーズンを通して使えるパスで、こちらも企業の協賛を受けています。
直筆メッセージを紙に書いて選手に贈れる企画にも、子どもたちが参加していました。
チアダンスチームも
試合前に出てきた応援するダンスチームは、ストリートダンス系の若い女性達です。United Archersと背中に書いてあります。バスケ会場のみならず、地域を盛り上げる取り組みも行っているそうです。中には、まだ学生のメンバーもいるそうです。試合前のアップ中には彼女らが来場者にインタビューして、お客さんとの絆をつくろうとしていました。応援練習も彼女たちが主導して行なっていました。オフェンスが3種類、ディフェンスが2種類と多めでした。
応援練習に続いて、子供たちのチアダンスチームが出てきて、タオルダンスの振り付けを教えてくれました。Little Arrowsというそうです。タイムアウトの時にもコート上で踊っていました。中には幼稚園生ぐらいの子もいて、ちょっとハラハラする感じ。お客さんは温かく見守っていました。
私が行った日のハーフタイムに行われたイベントは、小学生、中学生によるフリースローチャレンジ。小さい子はフリースローラインの少し手前からシュートしていました。外すと脱落、3本入れた女の子が優勝して、賞品をもらっていました。こういうのも次世代を育てる取り組みです。
香川ファイブアローズ 経営再建
試合を見てから新聞記事を調べると、ファイブアローズは債務超過が2.6億円と厳しい状況。立て直しの最中です。予算の限りもあり、やりたくてもできないことがたくさんあるのではないか、と察します。
第3クォーター終了後、観客数が発表されました。発表はどこのクラブでもしていますが、合わせてシーズン平均入場者数も発表するのは珍しいです。平均入場者数で定められたラインを突破しないと、リーグが定めたカテゴリーに入れないのです。経営上の重要な目標を、わざわざお客さんと共有しています。
高松駅前を歩いていたところ、建設中の大きなドームが目に飛び込んできました。2025年に新しい県立アリーナが完成予定です。立地条件もハード面も大きく変わるでしょう。今は我慢の時なのではないでしょうか。
そうした背景を知ると、今の会場での子供たちの楽しそうな姿や若者のはつらつとしたパフォーマンスは、未来に繋がっているとわかります。
新しいアリーナができた後、どうなっているのか。もう一度見に来たいと思いました。