北海道の中心都市、札幌市は有名な観光地として国内からだけではなく、海外からの観光客も非常に多く集めています。
もう50年以上昔のことなので忘れられていますが、人口195万人を抱える札幌市が、今のような形に発展した大きなきっかけは、1972年に冬季オリンピックを開催したことでした。そのあたりの歴史的な経緯や当時の様子などを学べる施設が、札幌オリンピックミュージアムです。
展示よりもむしろ、立地が非常に魅力的です。大倉山ジャンプ競技場の一角にあり、小高い場所ですので、このジャンプ場から札幌の街並みを一望することができます。こちらでジャンプの大会が行われた時の迫力のある映像を見たことがある人もいるでしょう。
札幌オリンピックミュージアム(大倉山ジャンプ競技場)へのアクセス
札幌の中心、大通駅から地下鉄東西線の「宮の沢」行きに乗車します。三つ目の円山公園駅で下車。ここまで約6分です。料金は210円で、全国の交通系ICカードが使えます。
円山公園駅に直結しているバスターミナルの4番乗り場から出ている、JR北海道バス「くらまる号」に乗り、終点の「大倉山ジャンプ競技場」で降ります。約15分。料金は210円で、交通系ICカードを使う場合は、乗る時にタッチして降りる時にもタッチする方式です。
ただし、このくらまる号は本数が少ないです。冬場は1時間に1本で、夏場(ゴールデンウィークの始まりから10月末まで)も1時間に2本しかありません。帰りのバスの発車時刻にも注意してください。
私の場合は、ミュージアムをざっと見るだけなら1時間で終わりました。ジャンプ台の上にある展望台まで行くなら、2時間取らなければなりません。攻略法としては、先に展望台に上がってしまい、その後でミュージアムを見学する方が時間調整がしやすいです。バス停も、ミュージアムの建物のすぐ隣にあります。ミュージアムの建物の三階にミュージアムショップがあり、そこのカウンターでチケットを購入します。展望台リストとミュージアムのセット券は大人1300円です。展望台だけだと1000円で、ミュージアムだけだと600円なので、かなりお得です。なお、ミュージアムは中学生以下は無料です。
無料のかなり広い駐車場があるので、レンタカーで行くのもよいでしょう。その時は時間をあまり気にせず、ゆっくり見られます。
札幌冬季五輪 開催した理由 なぜ札幌でウインタースポーツが盛んなのか
ミュージアムの見学コースは3階から2階に降りて、入っていきます。入り口の右手にある札幌のウインタースポーツの歩みが書かれたところから見ていくと、時系列でわかって良いと思います。
ラグビー場の名前で知られる秩父宮が北海道訪れたことが、札幌でウインタースポーツが盛んになるのきっかけとなったこと。また、この場所が大倉山というのは、ホテルオークラをつくった大倉氏がそのスポンサーになっていることなど、意外な繋がりに驚きました。
1972年に冬季五輪を開催した時も、簡単にもいかなかったことがパネルを読むとよくわかります。11日間に渡る熱戦のハイライトは、サラリと触れられている程度でした。
札幌の発展は、冬季五輪のレガシー(遺産)
冬季五輪の開催地は、スキー場がなければならないので、山の中にあるリゾート地などが選ばれることが多いです。札幌市は100万人都市で、この規模は非常に珍しいです。また、大会が行われた時には、競技会場だけではなく、道路や地下鉄、地下街、上下水道、電気などのインフラが整えられ、また、たくさんのホテルがつくられました。今、札幌を訪れる観光客が厳しい冬でも楽しめるのは、こうした都市基盤が整っているからです。競技施設のいくつかは、当時の街の郊外につくられたので、街が広がるきっかけにもなっています。
目立つ展示物は少なく、パネルの説明文が多いのですが、個人的には五輪招致までの経緯と五輪による札幌市の発展のコーナーが一番勉強になりました。読んで理解することが多いので、知識を得たい人に向いている施設だと思います。なお、説明文には英語も書かれていて、理解を助けます。私が訪れた時も、海外からの観光客を見かけました。
札幌オリンピックミュージアムの展示品 体験シュミレーター
1972年の札幌冬季五輪に関連した展示コーナーは、建物全体の中では大きなパートを占めていません。残りはオリンピック、パラリンピック、ウインタースポーツなどを紹介しています。パネルの展示により、オリンピックの歴史を知ったり、冬季パラリンピックの歴史や種目を学ぶことができます。それに関連した日本人メダリストが使用した用具もいくらか展示されています。札幌は2020東京オリンピックの際にも、マラソン、競歩、サッカーが行われています。
1階に降りると、ウインタースポーツの体験シュミレーターがいくつも並んでいます。真ん中に巨大なものが、スキージャンプ。他にも、クロスカントリースキー、スピードスケート、ボブスレー、アイスホッケーのゴールキーパーなど、コンピューターの画像を使った疑似体験ができます。
1階でも、パネルを見て、日本におけるスキーの歴史やスケートの歴史を学ぶことができます。ウインタースポーツに使われる用具に実際に触れるコーナーもありました。
大倉山ジャンプ競技場 展望台からの写真
初の方に書きましたが、この場所は、スキージャンプの競技場を展望台として観光地化しています。競技用のリフトを使って、標高307メートルの場所から、札幌市の市街地やさらに遠くまで見渡すことができます。展望台はしっかりとした建物で、見やすいです。そして、ジャンプ台のスタートラインを間近で見ることができるので、この競技に挑む選手のすごさを感じることができます。
リフトを降りながらジャンプ台の傾斜を見たり、遠くの街並みを見るのも楽しいです。大都市のすぐ近くにこのような山があることは、世界的に見ても珍しいことです。夏の時期には、営業時間が延長され、夜景も楽しめます。
札幌の冬は11月ごろから3月ごろまでと長く、雪の降る日も多く、その日に当たってしまうと、展望台の上から遠くまで見渡すことができません。眺めを楽しみたいなら、展望台に上がっても快適な気温で、晴れていることが多い季節に行くことをお勧めします。
札幌オリンピックミュージアムは、ウインタースポーツを知れる数少ない場所
ミュージアムは、2000年に現在の場所に移転してから増築や改築をして、現在の形になっています。寒いところに住んでいる人にとっては当たり前の日常なのですが、暖かい地域に住んでいる人にとってウインタースポーツは、すべてが珍しいものになります。それについて学んだり、アミューズメント施設のように体験できるのは面白いでしょう。ウインタースポーツを知れる、日本の中でも数少ない場所です。
札幌市は2016年に日本オリンピック委員会に開催提案書を提出して、二度目の冬季五輪招致を目指していました。しかし、市民の支持をなかなか得られなかったことなど、さまざまな要因が重なって、招致の時期が見通せないことになり、2023年12月に招致活動の停止を決定しました。しかし、五輪が再びやって来なくても、この街が魅力的であることは変わりません。