東京に住んでいる人にとっては、長年にわたって当たり前のようにそこにあるもので、スポーツ観戦やコンサートで行ったことがある方も多いので、その価値に気づかないかもしれません。実は、国立代々木競技場は、日本にある様々な建築物の中でも特別なものです。
2021年に国の指定重要文化財となっています。著名な建築家、丹下健三氏の代表作。円形をずらしたような組み合わせで、1964年の東京オリンピックを前に建設された当時の最高技術を駆使したものです。
今回バレーボールVリーグの東京グレートベアーズの試合を見に、代々木競技場第二体育館を訪れました。改めて、その建物の素晴らしさを感じました。
国立代々木競技場への行き方
JR山手線の原宿駅と、東京メトロ千代田線・副都心線のの明治神宮前駅が最寄りです。それらの駅から出てきた後、歩道橋を渡ります。その歩道橋の上から、第一競技場の写真を撮ると良いでしょう。建物の外観のユニークさが一枚で伝わります。第二体育館は、その裏手にあります。第一体育館の入口の左手に広い道がありますので、そちらから回っていきます。
一方で、原宿駅ではなく、渋谷駅からになりますが、世界中の人に知られている渋谷のスクランブル交差点からも、歩いて15分ほどのところにあります。公園通りという坂を上がって行きます。その途中には、西武百貨店、MODI、PARCOといった魅力的なショッピングビルが集まっています。
原宿駅の周辺、渋谷駅の周辺と、日本国内のみならず海外の人からも注目されているショッピングエリア、観光地です。日本で最も有名な街にあるスポーツ施設と言えるでしょう。
代々木第二体育館の外観、スタンドの写真
改めて気づきましたが、日本にある多くの体育館やアリーナは四角形の建物です。しかし、代々木第二体育館は珍しい円形です。柱が1本で、そこから屋根が帽子のように広がっている形をしています。
場外には3台のキッチンカーがあって、ピザなどちょっとしゃれたなものを売っています。
中に入ると、円形アリーナのスタンドの最上部が通路になっていて、少し傾斜があります。スタンドの高さと、そこにある座席数が場所によって変化しているということです。
また、柱によって視界が遮られることもありません。今となっては別に驚くことではありませんが、1964年当時の建築技術として、前例のない技法や方法を開発して建てられたそうです。そして、入口から少し光が入るのも、今回改めて気づきました。
また、フロアとスタンドの距離は近く、フロアにいる選手からもスタンドにいる人たちの顔がわかるくらいです。スタンドにからメッセージボードを掲げている観客もいましたが、選手はそれも読めていたはずです。
なお、第二体育館は2010年に大規模な改修工事がなされており、トイレが改修されたほか、音響も向上されたそうです。古い建物は色褪せることなく、その価値を発揮しているということです。
東京グレートベアーズの演出、フォトスポット、グッズなど
建物からチームに、話を移します。東京グレートベアーズはエンターテインメントを前面に押し出している、かなり新しいチームです。2022年に経営母体が変わり、プロチームとして発足しました。場内に入るとすぐに気が付いたことがいくつかありました。
まず、男子チームなのに、ピンクをメインのチームカラーとしているのが非常に珍しい。そして、場内にあるポスターやグッズ売り場が女性ファンに寄せたデザインになっています。日本ではバレーボールは元々女性の観客の比率が圧倒的に高いのですが、ここまで徹底的にチーム側が寄せているのは、ここだけでしょう。
印刷物のつくりが化粧品やファッションの広告に近い印象を受けました。写真の撮り方も広告っぽいです。
グッズは種類はそんなに多くないのですが、イヤリングやぬいぐるみ、小物などを揃えています。ユニフォームはあるものの、背番号の入ったTシャツなどを前面に押し出しているわけではありません。
写真を撮れるコーナーもあります。
人気モノとコラボ
東京グレートベアーズは活動方針の一つ目に「クリエイティブインパクト~一流クリエイター陣と共にバレーボールをより楽しく魅力的に発信する」と掲げています。
会場でもバレーボールがテーマの人気アニメーション、「ハイキュー」のグッズが売られていました。この日のゲストは有名な声優さんで、選手の名前を読み上げたり、始球式を行ったり、競技の合間に出てきてファンサービスを行っていました。
ホームページで過去のゲストの顔ぶれを見ると、非常に豪華です。バレーボールは別として、そのゲストが見たくて会場を訪れる人がいるのではないか、と思えるほどです。また、東京が本拠地なので、ゲストではなくとも、有名人が試合観戦に訪れることもよくあるようです。
また、選手紹介の映像の作りが凝ったものになっており、アニメーションを取り入れていました。パートナー企業の一つに、アニメーションの企画制作を行う会社が入っています。他のスポーツチームではあまり見かけない、連携の仕方です。
バレーは音で楽しむ
ここまでは視覚的な演出の話をしてきました。加えて、音の面でも非常に楽しめる空間でした。
チームのテーマ曲が著名なアーティスト、東京スカパラダイスオーケストラによってつくられたもので、チームを勢いづけるというか、トランペットやサックスなどの非常に力強い、テンションの上がる曲が繰り返し流されていました。この音楽が観戦者への演出のリズムを作っているような感じです。
また、このチームに限ったことではないのですが、バレーボールの試合観戦は、ポイントが決まると拍手、ハリセン、スティックバルーンなどをたたいて観客が盛り上がります。驚きのプレイなら、自然と力が入るので、音量が大きくなります。また、サーブの時にはゆっくりとした手拍子をすることも、バレーの応援の特徴です。
これらはコンサートよりも頻度が多いですし、ジャンプサーブやスパイクなどの豪快なプレーと連動している気持ちよさも感じられます。スカッとする感じが強いです。
代々木第二体育館の建築と音響
第二体育館のスタンドの座席数は約2800と小さいですが、これまで話してきたように特別な建物であり、周辺の環境の魅力が非常に大きいです。チームと名建築の両方を一度に楽しめる感じです。
東京グレートベアーズは都内の他のスポーツ施設を会場にすることもありますが、私個人はチームの演出がこのアリーナの円形でスタンドが近い環境とマッチして、観客がコート上の選手と一体となって応援しているような感覚がありました。これが重要文化財の底力なのでしょう。